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2008年6月16日月曜日

統合失調症とはどんな病気?

統合失調症は人口の約0.5%~1%が発症するといわれ、心の病気の中では最もよく知られている疾患です。

原因は今のところよくわかっていませんが、主として脳内のドーパミンという神経伝達物質が過剰に分泌されすぎ、情報処理がうまくいかなくなる、という説が上げられています。

こうした内的な因子に、精神的なストレスなどの外的因子が複雑に絡まって発病するといわれます。

統合失調症のタイプ

症状の現れ方によって「破瓜型」「緊張型」「妄想型」「残遺型」の4タイプに分類されます。
日本では「破瓜型」に分類される患者が多いといわれています。

■破瓜型
思春期頃の発病が多く、初期は幻覚、妄想といわれる体験は少なく、喜怒哀楽に乏しい、物事に対する意欲や関心がなくなる、周囲の状況にも無関心になる、といった症状が現れます。
たとえば、「学校に行きたがらない」「風呂に入りたがらなくなった」など、日常的にしていたことをしなくなります。

周囲には「元気が無い」「疲れているようだ」とうつることが多く、病気の発見に結びつきにくいため、知らぬ間に進行していきます。進行すると急に妄想が現れたり興奮したり、会話にまとまりがなくなるなどの症状が出て、はじめて病気と分かることが多いようです。

■緊張型
特別に興奮する理由も無いのに、突然興奮したり、落ち着きがなく動き回ったり、大声を出したり、しゃべり続けたりします。
その一方で動きが鈍くなることもあります。
他人の勧めや言葉を拒絶する態度をとることもあり、食事や着替え、入浴を勧めても行なおうとはしません。

また奇妙な姿勢をとる、一定のポーズをとり続ける(カタレプシー)、同じ動作を繰り返す(常道行為)、他人の言葉や動作をまねる(反響症状)、などの異常も現れます。
一日中横になっていることもあり、声をかけても反応しません(緊張病性昏迷)。
一見意識が無いように見えることもありますが、記憶ははっきりとしています。

■妄想型
破瓜型や緊張型に比べると、比較的、発病時期が遅い傾向があり、30歳~中年以降の発病が多いといわれます。
文字通り、妄想・幻覚が症状の中心で、妄想や幻覚に関連しないことでは、相手に合わせた会話が出来ます。

初期は「なんとなく周囲の人が自分を嫌っているようだ」「自分のうわさをしている」「妻(夫)が自分の友人と浮気をしている」といった被害妄想から始まります。
近くにいる人のあくびや咳、物の渡し方などちょっとした出来事を被害妄想に結びつけて考え、周囲の人に苦情を言うこともあります。

進行すると妄想は広がり、「自分が次に総理大臣になるから、周囲がねたんでいる」などといった誇大妄想が出たりします。
軽症のときは、ただ「変わった人」と見過ごされることもありますが、「友人に狙われていて殺されかけた」と警察に飛び込む、「盗聴器が仕掛けられている」とベランダの置物を壊すなどの行動があったときに病気が発見され、治療に結びつくことが多いようです。

■残遺型
統合失調症の治療を続け、回復してきた患者さんに多く見られるタイプです。
幻覚や妄想はほとんど消えていますが、喜怒哀楽が乏しい、表情が無い、会話の内容が乏しい、気力が無い、周囲の出来事に関心を示さないなどの症状(陰性症状)が主体です。

症状について

症状としては他方向に及びます。
主なものには次のようなものがあります。

■幻覚症状
実際にいない人や物が見えたり(幻想)、ヒソヒソ話など、その場にいない人の声が聞こえたりします(幻聴)。
幻聴の内容は、物音というよりも自分の悪口を言っている声が聞こえたり、「そこから動くな」といった命令的な声や「なぜあんなことをした」など、自分の行動や考えを批判する声が聞こえてくることが多いようです。
ときには、複数の人の声が頭の中で対話しているという幻聴(対話性幻聴)がみられます。
その他に「食物の味がおかしい」(幻味)、「誰かに触られている」(幻触)といった幻覚はあります。

■妄想
「人に追われている」(追跡妄想)、「周囲の人はみんな敵で、自分を殺そうとしている」(被害関係妄想)、「食事の味が変だったのは、毒を盛られていたからだ」(被毒妄想)、「私の部屋にはのぞき穴があり、いつも部屋をじっとのぞかれている」(注察妄想)などがあります。
これらのほとんどが自分が被害者であり、周囲の出来事や人の行動を被害的に自分に結びつける(自己関係づけ)という内容のものです。
また「何かが自分にとりついてる」(憑依妄想)などもあります。
初期には「なんとなく周囲の雰囲気がおかしい。大災害がおこりそうだ」(妄想気分)を抱き、不安や恐怖を周囲の人に話すようになります。
症状の進行と共に、具体的な妄想を訴えるようになりますが、周囲の人に否定されることにより、次第に妄想を話さなくなります。
また自分の意思や行動、言動は、他人やその他の特別なものに支配されていると思い、その通りに行動したり、話をすることもあります(被影響)。

■会話・行動の異常
会話が急に途切れたり、同じ言葉を繰り返したり、話しかけてもまったく別のことをしゃべり始めたりします。
意味不明の言葉を使う、話の筋道がまとまらない、支離滅裂な内容の話をすることもあります。
声も極端に小声だったり、時には大声でわめくようにしゃべります。
行動面では、理由も無いのに笑う、ムッとしたような顔をする、ブツブツひとり言をいう、他人の姿勢や行動を真似する、同じ姿勢をとり続ける(カタレプシー)、食事や着替え、入浴などの基本的なことをしなくなるなどが現れます。
症状の進行とともに、やがては自分の部屋に閉じこもりがちになります。

■感情の異常
不安、恐怖、緊張感が強く、表情も硬く、体をこわばらせたりします。ときには現実感の喪失(離人感)を訴えることもあります。
また突然、イライラしたり、感情を爆発させて暴力を振るったりします。悲しい状況なのに大声で笑うなど、状況にそぐわない感情がでてくることもあります。

■その他
特殊な例として、強迫症状の強い場合があり、物事をすべて左右対称にきっちり置き分ける、絵を描かせると奇妙にきっちり分かれた対照的図柄が現れることがあります(病的幾何学主義)。

周囲の人の対応

統合失調症は不治の病、人格崩壊につながる怖い病気、という認識がまだまだ根強いようです。しかし、回復して社会復帰を果たしている方や、なんらかの形で社会に適応して生活している方も決して少なくありません。
家族や周囲の人には、この病気を理解して、偏見や不安、嫌悪感などを減らし、患者さんに接することが求められます。